前回の記事ではGitHub Copilotを紹介しました。Copilotが「あらゆるエディタにAIを届けるインフラ」であるのに対し、今回紹介する Windsurf は 「AIがプロジェクトを”覚えて”育つ、自律学習型エディタ」 です。
Windsurfは、元々Codeiumとして知られていたAIコーディングツールが進化したIDEです。CEOと共同創業者がGoogleに移籍した直後の2025年7月、自律型AIエージェント「Devin」を開発するCognition社に買収され、IDE × 自律エージェント という他にない組み合わせを持つプラットフォームに生まれ変わりました。
この記事を読めば、Windsurfの独自機能であるCascadeとMemories、Devin統合の意味、そしてCursor・GitHub Copilotとの違いがクリアになります。
Windsurfとは?── 30秒でわかる概要
Windsurfは、Cognition社(旧Codeium→Cognition買収後)が提供する AIネイティブのコードエディタ です。第1回の記事で解説した「プラットフォーム(車)」に当たります。
Cursorと同じくVS Codeベースのエディタですが、Windsurfの設計思想は明確に異なります。Cursorが 「今この瞬間のコーディングを最速で支援する」 ことに注力しているのに対し、Windsurfは 「プロジェクトの文脈を蓄積し、使うほどAIが賢くなる」 ことを目指しています。
この思想を体現するのが、2つのコア機能です。
Cascade: Windsurfのエージェントエンジン。コードベース全体を理解し、複数ファイルにまたがる変更・ターミナル操作・デバッグを自律的に行います。Write / Chat / Turbo の3モードを持ち、タスクの性質に応じて使い分けます。
Memories: AIがプロジェクト固有の文脈を「記憶」する仕組み。コーディング規約、アーキテクチャの決定、過去の会話の要点── こうした情報を自動的に蓄積し、次のセッションに引き継ぎます。毎回同じ説明を繰り返す必要がなくなるのは、長期プロジェクトほど大きな恩恵です。
さらに、2025年12月のCognition買収により、自律型AIエージェント Devin がWindsurfエコシステムに統合されつつあります。エディタ上のリアルタイム支援(Cascade)と、バックグラウンドでの完全自律型タスク実行(Devin)── この「二刀流」が、Windsurfの最大の差別化要素です。
できること・得意なこと
Windsurfの機能は大きく5つに分かれます。
Cascade(エージェント): Windsurfの中核機能です。3つのモードで動作します。Write Mode はコードへの直接変更を自律的に実行。ファイル作成・編集・削除、ターミナルコマンドの実行、エラーの検出と修正を一連の流れで行います。Chat Mode はコードを変更せず、質問への回答や設計相談に対応。Turbo Mode は完全自律実行で、複雑なタスクをCascadeに丸投げできます。いずれのモードでも、Cascadeはあなたの操作(ファイル編集・ターミナル入力・クリップボード)をリアルタイムで追跡し、意図を推測して次のアクションを提案します。Cursorが「指示して→AIが動く」という明確なターン制であるのに対し、Cascadeは 人間の編集をリアルタイムで解釈し、関連する変更を先回りで準備する 設計です。AIを「呼び出す」のではなく、AIが常に「並走している」── この操作感の違いがWindsurfの体験を特徴づけています。
Memories(記憶): Cascadeが会話の中で「重要」と判断した情報を自動的に記憶する仕組みです。「このプロジェクトはVitestを使っている」「APIのエラーハンドリングはResult型で統一」── こうした文脈が蓄積され、次のセッションでも自動的に参照されます。単なるコードの類似検索(RAG)ではなく、「以前このライブラリでバグが出たから今回は使わない」「この設計は検討した上で不採用にした」といった 過去の意思決定の経緯 も記憶対象です。エンジニア間の「暗黙知」をAIが保持するという点で、既存のコンテキスト検索とは一線を画します。手動で「これを覚えて」と指示して記憶を作成することも可能です。記憶はワークスペース単位で保存され、クレジットを消費しません。チーム全体で共有したい場合は、.windsurf/rules/ ディレクトリに書き出すことで、リポジトリ経由でルールを共有できます。
Tab(コード補完): コード入力中にAIがリアルタイムで次の行を予測・提案します。CursorやCopilotのコード補完に相当する機能で、Windsurfのコンテキスト理解と組み合わさることで、プロジェクト固有のパターンに沿った提案が得られます。
Devin統合(非同期自律エージェント): Cognition買収により利用可能になった、Windsurf独自の強みです。Devinは エディタの外でタスクを完全自律的に実行する AIエージェントです。バグ修正、テスト作成、デプロイメント── Devinにタスクを割り当てれば、バックグラウンドで独立して作業を進め、完了後に結果を報告します。Cascadeが「リアルタイムのペアプログラマー」なら、Devinは「バックログを黙々と消化するチームメイト」です。GitHub Copilot ── 「Coding Agent」セクションが「Issue→PR」のワークフローに特化しているのに対し、Devinはより広範な開発タスクを自律的に遂行できる点が異なります。
マルチモデル対応: GPT-5、Claude Sonnet 4.6、Gemini 2.5 Proなど複数のモデルを選択可能。タスクの複雑さに応じてモデルを使い分けることで、クレジット消費を最適化できます。
料金プラン
2026年3月時点のプラン一覧です。Cursor・Copilotと同様にクレジット制を採用しています。
| プラン | 月額 | プロンプトクレジット | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Free | 無料 | 月25回 | Cascade 1日5セッション、Tab補完あり |
| Pro | $15 | 月500回 | 無制限Cascade、SOC 2準拠 |
| Teams | $30/ユーザー | チームプール | 管理ダッシュボード、分析、優先サポート |
| Enterprise | $60/ユーザー | チームプール | RBAC、SSO/SCIM、セルフホスト対応、最長コンテキスト |
追加クレジット: Proは$10で250クレジット、Teams/Enterpriseは$40で1,000クレジット(チームプール)。クレジットは月末リセットで繰り越し不可。
Cursor・Copilotとの料金比較
| Windsurf Pro | Cursor Pro | Copilot Pro | |
|---|---|---|---|
| 月額 | $15 | $20 | $10 |
| クレジット/リクエスト | 500回 | クレジット制 | 300回 |
Windsurfはクレジット単価で見るとCursorとCopilotの中間に位置します。ただし、Devin統合という独自機能を持つため、単純な価格比較だけでは判断できません。チーム利用ではWindsurf Teams($30/ユーザー)に対し、Copilot Business($19/シート)の方が安価ですが、Memoriesやセルフホスト対応など機能面の違いを加味して判断する必要があります。
Free(月25回)はCursor(月制限なし・2週間)やCopilot Free(月50回)と比べて少なめです。本格評価にはProプラン($15)での試用を推奨します。
データの取り扱い・プライバシー設定
AIエディタにソースコードを預ける以上、データの取り扱いは重要です。
| プラン | 入力データの学習利用 | データ保持 |
|---|---|---|
| Free | オプトアウト可能 | 一時キャッシュ(数時間)で破棄 |
| Pro | オプトアウト可能 | ゼロデータ保持を選択可能 |
| Teams | なし | デフォルトでゼロデータ保持 |
| Enterprise | なし | ゼロデータ保持 + 監査ログ + セルフホスト |
Windsurfのプライバシー設計の特徴:
WindsurfはSOC 2 Type IIとFedRAMP High認証を取得しており、セキュリティ基盤はAIエディタの中でもトップクラスです。Teams/Enterpriseプランではデフォルトでゼロデータ保持が適用されます。
Enterpriseプランではさらに、3つのデプロイメントモード を選択できます。Cloud(フルマネージド)、Hybrid(データ保持は顧客テナント、推論はクラウド)、Self-Hosted(全計算・全データを顧客環境内で完結)。Self-HostedはDocker ComposeまたはHelm Chartで提供され、コードが一切社外に出ない環境を構築可能です。2026年3月時点で、推論まで含めた完全オンプレミスに対応しているモダンAIエディタはWindsurfのみであり、金融・公共・防衛など「コードの社外流出が絶対に許されない」領域では最有力の選択肢です。
Memories機能については、自動生成された記憶はローカル(~/.codeium/windsurf/memories/)に保存され、リポジトリにコミットされません。クレジットも消費しないため、プライバシーへの影響は限定的です。
Cursorとの比較: CursorはPrivacy Mode(手動有効化)でゼロデータ保持を実現。WindsurfはTeams/Enterpriseでデフォルト適用に加え、Self-Hosted(完全オンプレミス)という選択肢を持つ点で、セキュリティ要件の厳しい組織にはWindsurfのEnterprise構成が優位です。
おすすめの使い方・プロンプト例
Windsurfの強みは「Cascade × Memories」の組み合わせにあります。使い込むほどAIが文脈を学習し、提案の精度が上がっていく── この特性を活かした使い方を紹介します。
1. Memories活用の長期プロジェクト開発
Cascadeに「このプロジェクトではZodでバリデーションを統一している。型定義はsrc/types/に集約。APIレスポンスはResult<T, E>型で返す」と伝える
ポイント: 初回セッションでプロジェクト固有のルールを伝えておけば、Memoriesが自動的に記憶します。2回目以降は指示しなくても、Cascadeがこのルールに沿ったコードを提案します。長期プロジェクトでは、セッションを重ねるほどAIの提案精度が上がっていく実感が得られます。
2. Turbo Modeでの一括リファクタリング
「src/legacy/以下のクラスコンポーネントをすべてReact Hooksに変換して。既存のテストが通ることを確認してから完了して」
ポイント: Turbo Modeは、Cascadeに複雑なタスクを丸投げする完全自律モードです。CursorのAgent Modeと似ていますが、Memoriesに蓄積されたプロジェクト文脈を参照するため、プロジェクト固有のパターンに沿った変換が期待できます。
3. Cascade Chat Modeでの設計相談
「現在のDBスキーマを分析して。マイクロサービス化する場合、どのテーブルをどのサービスに分割すべきか提案して」
ポイント: Chat Modeはコードを変更せず、相談や分析に使います。コードベース全体を参照した上での回答が得られるため、アーキテクチャの意思決定に役立ちます。
4. Devinへの非同期タスク割り当て
Devinに「バックエンドのAPIレスポンスにページネーションを追加して。既存のエンドポイント全てに適用すること」とタスクを割り当てる
ポイント: Devinはエディタの外で独立して作業する非同期エージェントです。あなたがフロントエンドの作業に集中している間に、Devinがバックエンドの定型タスクを進めてくれます。CopilotのCoding AgentがIssue→PRのワークフローに限定されるのに対し、Devinはより広範なタスクを自律実行できます。
5. .windsurf/rules/ によるチームルール共有
.windsurf/rules/coding-standards.mdにチームのコーディング規約を記述し、リポジトリにコミット
ポイント: Memoriesは個人のワークスペースに閉じますが、.windsurf/rules/ に書き出せばリポジトリ経由でチーム全体に共有できます。CursorのRulesファイル(.cursor/rules)に相当する機能で、チーム全員のCascadeが同じ規約に従って動くようになります。
注意点・苦手なこと
Windsurfにも限界と不確実性があります。
買収後の不透明さ: 2025年7月にCEOと共同創業者がGoogleに移籍し、直後にCognitionが買収── という激動を経ています。プロダクトの方向性やロードマップが安定するまで、今後も変動がある可能性は否定できません。長期的なツール選定では、この不確実性をリスクとして認識しておく必要があります。
Cursorほどの「Agent Mode」の成熟度はまだこれから: CursorのAgent Modeは自己修正ループ(実行→エラー検知→修正→再実行)やgit操作の統合で先行しています。WindsurfのCascade Write/Turbo Modeも同様の自律性を持ちますが、コミュニティの規模とフィードバックの蓄積ではCursorに一日の長があります。
Free枠の少なさ: 月25クレジット・1日5 Cascadeセッションは、他のAIエディタと比べて控えめです。本格的な評価にはProプラン($15)が事実上必要です。
Devin統合はまだ発展途上: Devinとの連携は買収後の最大の期待ですが、2026年3月時点ではまだシームレスな統合とは言えません。「Cascadeでリアルタイム+Devinで非同期」の二刀流が真価を発揮するには、もう少し時間がかかりそうです。
Copilotのようなエディタ自由度はない: WindsurfはVS Codeベースの専用エディタのため、JetBrains・Vim・Xcodeユーザーは乗り換えが必要です。この点ではCopilotの「どのエディタでも使える」優位性が際立ちます。
5軸スコア
第2回の記事で紹介したシリーズ共通の5軸で、Windsurfを評価します。
| 評価軸 | スコア(5段階) | コメント |
|---|---|---|
| 知能・論理 | ★★★★☆ | マルチモデル対応。Memoriesによる文脈蓄積でプロジェクト固有の回答精度が向上する点はユニーク |
| スピード | ★★★★☆ | Tab補完は高速。Cascade Write/Turboは自律実行のため体感は非同期的 |
| コンテキスト | ★★★★★ | 単一セッションのウィンドウサイズだけでなく、Memoriesによるセッション横断の文脈保持を実現。過去の設計判断や不採用理由まで引き継げるのはWindsurfだけ |
| 実行力 | ★★★★★ | Cascade 3モード + Devin非同期エージェント。IDE内外を跨ぐ自律実行の幅はトップクラス |
| コストパフォーマンス | ★★★★☆ | Pro $15は妥当だが、Free枠が少なく試しづらい。Devin統合が成熟すれば、自律開発による時間削減効果でコスパ評価は上がる可能性あり |
こんな人におすすめ / こんな人には向かない
おすすめな人:
長期プロジェクトに携わる開発者。Memoriesによる文脈の蓄積は、数ヶ月にわたるプロジェクトで最も効果を発揮します。セッションを重ねるほどAIが「このプロジェクトのことをわかっている」状態になるのは、Windsurf独自の体験です。
自律エージェントに興味がある開発者。Cascade + Devinの二刀流は、「リアルタイム支援」と「非同期自律実行」を1つのプラットフォームで実現する唯一の選択肢です。エージェント時代の開発スタイルを先取りしたい方に。
セキュリティ要件の厳しい組織。Self-Hosted(完全オンプレミス)対応は、Cursor・Copilotにはない選択肢です。コードを一切社外に出せない環境でAIエディタを導入する場合、WindsurfのEnterprise構成が最有力候補になります。
向かない人:
安定性を最重視する方。→ 買収後の方向性がまだ固まりきっておらず、ロードマップの不確実性があります。実績と安定性ならCursor。
VS Code以外のエディタを使いたい方。→ GitHub CopilotがJetBrains・Vim・Xcodeで利用可能。
まず無料で十分に試したい方。→ Copilot Free(月50回)の方が試用枠が大きく、評価しやすいです。
まとめ
Windsurfは 「AIが学習し、育つエディタ」 です。
Cursorが「AIの深さ」、GitHub Copilotが「AIの広さ」を追求しているのに対し、Windsurfが目指すのは 「AIの記憶と自律」 です。Memoriesによるセッション横断の文脈保持、Cascadeによるリアルタイムの自律支援、そしてDevinによる非同期の完全自律── この3層構造は、他のAIエディタにはないWindsurf独自のアーキテクチャです。
ただし、Cognition買収後のプロダクト安定性には注意が必要です。2026年3月時点では「大きなポテンシャルを持つが、まだ進化の途上」── これがWindsurfの率直な現在地です。今後のDevin統合の進化次第では、AIエディタの勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めています。
Qurated Labでは、主軸のCursorとCopilotに加え、Windsurfの動向を注視しています。特にMemories機能は、長期プロジェクトでの文脈管理という業務上の課題と直結しており、成熟度が上がれば本格導入を検討したい機能です。
次回は、エディタから離れてターミナルの世界へ── Claude Code・OpenAI Codex を紹介します。