事例 2026年6月20日 読了 約8分

Claudeに行政系MCPを繋いでみた -- 制度横断の「抜け漏れ」が一気に消えた話

ライフイベントが重なる時期、各自治体・省庁のページをタブで20個開いた挙句「で、結局何が残ってる?」で詰まる、ということが何度かありました。Claudeに行政系MCPを噛ませて丸投げしたら、A4数ページのチェックリスト + カレンダー取込ファイルまで一気に出てきて、明日からの動きがはっきりした、という事例です。

QE
Qurated編集部
デザインL

はじめに

引っ越し、雇用形態の変更 … ライフイベントは1つずつ来てくれる時はまだ良いのですが、複数が同じ数ヶ月の間に並走しはじめると、各制度のお互いの影響が一気に複雑になります

  • 引っ越しで自治体が変わる → 各種申請の所管が変わる。住民票・国保・印鑑登録・運転免許・銀行/カード/保険の住所変更
  • 雇用形態が変わる(会社員 → フリーランス) → 健保資格喪失、国保切替 or 任意継続の判断、厚生年金 → 国民年金、確定申告、住民税の取り扱い

私はちょうど数ヶ月の間にこの2つが同時に降ってきた時期があり、各自治体の手続きページ・厚生労働省のページ・国税庁のFAQをタブで20個開いた挙句、「で、結局何が残ってる?」で詰まるということを繰り返していました。

そこで今回試したのが、Claudeに行政系MCPを噛ませて、制度横断の抜け漏れチェックを丸投げするというアプローチです。結果、A4で10ページ近いHTMLチェックリストと、Googleカレンダーに取り込めるicsファイルまで一気に出てきて、「明日から何をやればいいか」が見える状態になりました。

本記事では、その構成と効いた使い方のコツを共有します。

自己紹介

Qurated編集部のKです。普段はAWSのインフラ周りを生業にしていて、最近はClaudeを「業務の道具」から「生活の整理係」に持ち込んでいます。

繋いだMCPの構成

Claude Desktopに以下のMCPサーバを設定しました。

  • localgov-jp (GitHub) — 日本の自治体補助金・助成金API。特定自治体のメニューも、国の制度横断も引ける
  • e-Gov Law (GitHub) — 法令検索。制度の根拠条文を引いてくる
  • filesystem (公式) — 成果物(HTML/ics)をローカルに書き出す
  • tavily (GitHub) — 上の2つに載らない自治体個別ページなどの補助検索

設定はそれぞれのリポジトリのREADMEどおりで、特別なことはしていません。

INFO

localgov-jpは日本の自治体補助金・助成金APIをラップしたMCPです。基本の検索系は無料で、グラフ走査や変更購読といった一部の高度な機能だけが従量課金(x402決済)というモデル。今回必要だった「検索」用途は無料で完結しました。

Claudeに頼んだこと

依頼は、前提を全部渡すスタイルで投げました。日付・住所・職場名などの個別情報は伏せ字に置き換えています。

これから〇ヶ月の間に、以下が同時並行で進む。

- 〇月:引っ越し(A区 → B区)
- 〇月:会社員 → フリーランス(健保・年金は国保・国民年金へ切替)

これらにまつわる行政手続き・税金・社会保険を、
- 制度名
- 根拠条文 / 通知
- 提出先
- 期限(出発日からの相対 + 想定絶対日付)
- 必要書類

の5項目で横断的にチェックリスト化してほしい。
私が見落としている観点があれば、それも追加で挙げて。

最後に、提出期限を Google Calendar に取り込める ics ファイルとして出力。
個人情報(日付・氏名・住所)は伏せ字のままで構わない。
HTMLで出力して。

意識したのは、前回の記事Claudeを使ってQOLを上げる工夫をしてみたで書いた**「答えではなく観点/比較軸を求める」**という使い方の延長です。今回は「観点 = 制度横断の漏れ」を依頼しています。

返ってきた整理

Claudeが返してきたのは、A4で10ページ近いHTMLチェックリストと、20件超の予定を含む events.ics でした。

① 制度横断チェックリスト(HTML)

大きく2カテゴリに分かれた状態で返ってきました。

  • 転居系: 転出届 / 転入届 / 国保・後期高齢者医療の切替 / 印鑑登録 / 運転免許 / 銀行・カード・保険の住所変更
  • 雇用形態変更: 健保資格喪失 → 国保加入 or 任意継続の判断 / 厚生年金 → 国民年金切替 / 退職金関連 / 確定申告 / 住民税の一括 or 分割 / 小規模企業共済の加入判断

各項目に 根拠条文 / 通知 + 期限 + 提出先 が添えられていて、「これは前提が違うと不要」「これは期限が短いので優先」までコメントが付きます。

② 期限ics

20件超の予定が events.ics ファイルで出てきて、Googleカレンダーに取り込むだけで全部の締切がカレンダー上に展開されます。「転入届は転居から14日以内」「健康保険資格喪失届は退職から5日以内」のような相対期限が、自分の引っ越し予定日・退職日からの絶対日付に置き換わって入ってくるので、頭の中で日付計算をしなくていいのが地味に効きました。

WARN

出力はあくまで一般情報の整理であって、個別事案の法的助言ではありません。書類の正確な様式・提出先は、必ず各自治体の窓口や所管省庁の最新ページで再確認してください。Claudeの出力にも各項目にその旨の注意書きが入っていました。

各MCPに「何ができて、何ができないか」

使い込んでみて、各MCPの得手不得手がはっきり見えてきました。組み合わせ前提で整理します。

MCP強み苦手
localgov-jp自治体の補助金・助成金検索。法人/個人事業向けも横断国保・健保・年金など、国の社会保険系の手続きは載らない(自治体側の業務に閉じる)
e-Gov Law条文の根拠を引っ張る。「これって何法の何条?」が一発「実務上どう書類を出すか」までは行かない(あくまで法令)
filesystemローカルに直接HTML/icsを書き出す。後で参照可能(特になし)
tavilylocalgov-jp / e-Govに載らない自治体個別ページの補完検索精度はキーワード次第。「公式」が混ざっていない結果も返る

要するに、localgov-jpで自治体補助金を引き、e-Govで条文を確かめ、足りない国の手続き情報や個別ページはtavilyで埋めて、filesystemに成果物を残す、という分担がきれいにハマりました。

「1個のMCPで全部解決」はありえず、Claudeが自分で適切なMCPを切り替えて使うのがこの構成の本体です。

効いた使い方のコツ

3つあります。

1. 前提を「日付つき」で全部渡す

「〇月〇日に引っ越し」「〇月〇日に退職」と日付を渡すと、Claudeは期限を起点日からの加算で計算してくれる。「転居から14日以内に転入届」「退職から5日以内に健保資格喪失届」のような相対期限が、自分のカレンダー上の絶対日付に置き換わって出てきます。手で計算するとどこかで間違えるので、ここを機械任せにできるだけで安心感が違います。

2. 「抜けている観点」を最後に必ず聞く

依頼の最後に 「私が見落としている観点があれば追加して」 を入れるだけで、出力の網羅性が一段上がります。今回も「小規模企業共済の加入判断は会社員のうちにやれるか」「住民税は退職時期次第で一括 or 分割」といった、自分では気づけなかった論点が勝手に追加されました。

3. 成果物は「HTML + ics」のセットで頼む

以前の記事ClaudeにMarkdownで返させるのはもう古いでも書いた、Markdown → HTMLの体験向上が、行政手続きの整理でも効きます。さらに期限はカレンダー取込用のicsにすることで、「整理する」から「スケジュール化する」までの距離がゼロになります。

何が変わったか

前回の家賃の記事と同じ結論なのですが、情報そのものではなく取りかかるまでのコストが変わりました。

  • 各自治体・省庁のページを横断する初動コストが消える
  • 「自分の状況にどれが当てはまるか」のフィルタリングが終わった状態で出てくる
  • 期限がカレンダーに乗るので「で、明日何やる?」で詰まらない

ライフイベントが重なる時期って、やるべきことそのものより、やるべきことの一覧化に一番疲れるんですよね。そこをまるごと肩代わりしてもらえる感覚が、QOL向上の本体だと思います。

個人だけじゃない — 会社・事業の補助金探しにも効く

ここまでは個人の手続きの話でしたが、実はlocalgov-jpの本来の強みは、法人 / 個人事業向けの補助金・助成金検索です。同じパターンがそのまま事業側に転用できます。

たとえばこんな前提を渡せば、

- 業種:SaaS開発
- 従業員:〇名
- 所在地:〇〇市
- 直近で考えている動き:設備投資 + 採用 + DX推進

以下のような形で、根拠 + 公募期間 + 申請先 + 必要書類セットの一覧が返ってきます。

  • 国の補助金: IT導入補助金 / ものづくり補助金 / 事業再構築補助金 など
  • 自治体補助金: 所在地の区市町村・都道府県が出している中小企業支援メニュー
  • 雇用関連助成金: 厚生労働省のキャリアアップ助成金・人材開発支援助成金 など
  • 業種・テーマ特化: 該当する業界別・テーマ別補助金(DX / GX / 海外展開 など)

事業側の補助金は、個人の手続きより申請書類も判定条件もはるかに複雑です。そのぶん「条件に合うものはどれか」「公募期間内に間に合うか」を一次整理できる価値は、個人ケース以上に大きいと感じました。

法人の経営企画・総務・財務担当の方や、フリーランス・個人事業主の方も、同じ構成で「自社/自分が使える補助金の棚卸し」を月1で回すと、取りこぼしがなくなるはずです。

まとめ

  • 行政手続きが複数重なる時期は、Claude + 行政系MCP(localgov-jp / e-Gov Law / filesystem / tavily)の組み合わせが効く
  • 各MCPには得手不得手があるが、自治体補助金 + 法令根拠 + 補助検索 + ファイル出力で分担すると過不足ない
  • 「前提を日付つきで渡す」「抜けている観点を最後に聞く」「HTML + icsで受け取る」の3点で出力品質が一段上がる
  • 個人のライフイベントだけでなく、法人・個人事業の補助金棚卸しにも同じパターンがそのまま使える
  • 出力はあくまで一次整理。最終確認は各自治体・省庁の最新ページで行う

結論

行政手続きの抜け漏れチェックは、Claude + 行政MCPの十八番。

ライフイベントの並走で詰まりかけたら、各役所のページを開く前に一度、Claudeに「制度横断で抜けを洗い出して」と投げてみてください。整理の99%は機械側で済みます。


AIを「行政手続きの壁打ち相手」に変える使い方

MCPを組み合わせれば、AIは単なる調べ物以上の整理係になります。業務でも生活でも、AIをどこまで頼っていいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。