はじめに
「AI なら、ショート動画も作れるのかな?」
「でも、どう指示したらいいんだろう……」
そう思ったことはありませんか?
手元には旅先で撮った写真や動画がたくさんある。TikTok や Instagram、YouTube にも載せたい。でも、縦長に切って、テロップを入れて、書き出して、媒体ごとにキャプションを書き分けて……と考えると、なかなか手が回りません。
私たちも同じでした。そこで、この一連の作業を Claude Code に任せてみることにしました。題材は、福島・会津で貸切のガイドツアーを手がける「旅の糸」の SNS 動画です。できあがった動画は 旅の糸の YouTube チャンネル で見られます。
やってみると、「素材を使って動画を作って」と一言頼むだけで、素材選びから書き出し、投稿文まで仕上げてくれました。さらに、手元の PC で動かす CLI 版だけでなく、ブラウザから使える Web 版(claude.ai/code)でも同じように作れます。
本記事では、Claude Code でショート動画を作る仕組みと、CLI 版・Web 版それぞれでの作り方、うまく頼むコツを紹介します。
先に結論を書くと、作る力はどちらも同じです。違いは「素材と完成品をどう受け渡すか」と「一般の Web サイトを開けるか」の2点です。
自己紹介
Qurated編集部のFです。「旅の糸」の SNS 運用で、Claude Code を使ったショート動画づくりを担当しています。今回は、ふだん手元の CLI 版で作っている流れを、ブラウザの Web 版でも再現できるかを試してみました。
Claude Code が動画を作る仕組み
Claude Code が動画を直接編集するわけではありません。カット・テロップ・音を書いた設定ファイル(以下「レシピ」)を作り、ffmpeg を呼ぶスクリプトで書き出します。同じレシピからは、どこで書き出しても同じ動画ができます。
- 素材を集める: 写真と動画(iPhone の HEIC や MOV)を作業フォルダに置く
- 素材を全部見る: 縦型(9:16)に切った形でテロップの帯を重ね、写り込みや使用済みの素材を外す
- 構成とテロップを決める: 事実は出典と一緒にレシピに記録する
- レシピを書く: 素材・切り出し位置・尺・テロップ・音・出し先
- 書き出す: ffmpeg で 1080×1920 の MP4 にする(30秒の動画で3〜6分)
- 確かめる: 0.5秒ごとにフレームを抜いて見る。音量は LUFS で測る
- 投稿文を作る: 媒体ごとのキャプションとハッシュタグ
この流れと注意事項を CLAUDE.md とメモリに書いておくと、「動画を作って」の一言でこの順に進めてくれます。
CLAUDE.md とは
CLAUDE.md は、プロジェクトのフォルダに置いておく説明書のようなテキストファイルです。Claude Code は作業を始めるときに自動でこのファイルを読み、書かれている手順や決まりに沿って動きます。毎回の依頼で同じ説明をくり返さなくてよくなるのが利点です。
動画づくりなら、たとえば次のようなことを書いておきます。
# ショート動画の制作
## 流れ
1. 素材を全部見る(9:16 に切り、テロップの帯を重ねて確認する)
2. 構成とテロップを決める。事実は出典と一緒にレシピに書く
3. レシピから書き出す
4. 0.5秒ごとにフレームを抜いて確認し、音量は LUFS で測る
## 媒体ごとの型
- TikTok・Instagram: 30〜35秒、テロップは6枚、1行11文字まで
- YouTube・Facebook: 曲は申し立てが無いと確認済みのものだけ使う
## 素材の線引き
- 人物・建物は写さない。電線は隅に細く1本まで
- ほかの回で使った素材は使わない
もう一つの「メモリ」は、作業の中で分かった注意事項(「この素材は写り込みがあった」など)を Claude Code が書き残しておく仕組みです。CLAUDE.md が決まりごと、メモリが経験の積み重ね、と考えると分かりやすいと思います。
CLI 版と Web 版、どちらで作るか
書き出しの品質は同じでした。Web 版で書き出した動画は、手元の完成版と映像の一致度(SSIM)0.98、音量も同じです。違いが出るのは、そのまわりの工程です。
| 工程 | CLI 版(手元の PC) | Web 版(claude.ai/code) |
|---|---|---|
| 書き出し | できる | 同じ品質でできる |
| 一言の依頼からの制作 | できる | できる。テーマ選びから投稿文まで |
| 素材の取り寄せ | フォルダを開くだけ | ストレージの API が要る。Drive コネクタは 10MB まで |
| 完成 MP4 の受け取り | そのまま手元にある | API でストレージに置く。Git は1ファイル 100MB、画面からのファイル送信は 30MiB まで |
| HEIC(iPhone の写真) | 読める | 読める。ただし ffmpeg 7.1 以降が要る |
| 事実の裏取り | 公式サイト・公的 DB を開ける | 既定の設定では一般のサイトが開けない |
| 予約投稿 | ログイン済みブラウザで代行できる | できない |
| 作業中の PC | 開いたまま | 閉じてよい。スマホから様子を見られる |
使い分けの目安: 新しい事実を扱う回や、公開前の仕上げは CLI 版。確かめ済みの事実で作る試作や書き出し直し、外出先からの依頼は Web 版が向いています。
CLI 版で作るとき
CLI 版は、素材も完成品も手元にあるので、準備はほとんど要りません。
- 作業フォルダに素材を置き、
CLAUDE.mdに制作の流れと媒体ごとの決まりを書いておく - ffmpeg を入れておく(HEIC を扱うなら 7.1 以降)
- 公開前の裏取りは、Claude Code に公式サイトや公的 DB を開かせて確かめる。出典が割れたら数字は書かない
Web 版で作るための準備
Web 版は、プロジェクト一式を GitHub に、素材と完成品をストレージに置き、その間を API の鍵でつなぎます。最初に一度用意すれば、あとは一言で頼めます。
flowchart LR
user["依頼する人<br/>スマホ・PC から一言で"]
gh["GitHub リポジトリ<br/>CLAUDE.md・メモリ<br/>スクリプト・レシピ"]
src["Google Drive<br/>素材フォルダ<br/>閲覧者で共有"]
cc["Web版のセッション<br/>Claude Code + ffmpeg<br/>クラウドで動く"]
out["Google Drive<br/>共有ドライブ<br/>完成 MP4 を置く"]
user -- 依頼 --> cc
gh <-- 読む・push --> cc
src -- API で取り寄せ --> cc
cc -- API で書き戻し --> out
素材は閲覧のみ、書き込みは共有ドライブの1フォルダだけです。完成した動画は共有ドライブから、レシピと投稿文は GitHub から受け取ります。
- GitHub の非公開リポジトリ:
CLAUDE.md・スクリプト・レシピ・フォント・BGM・メモリを入れる。素材と MP4 は入れない。リポジトリに Claude GitHub App を入れる setup.sh: ffmpeg を入れる。HEIC を読むなら 7.1 以降の静的ビルド(apt の 6.1 では読めない)CLAUDE.mdの冒頭に「環境の違い」: メモリを最初に読む / 素材の取り寄せ方と使ってよい範囲 / 完成品の置き場所 / やり取りの言語- ストレージの鍵: Google Drive ならサービスアカウントを作り、素材フォルダを閲覧者で共有する。書き戻し先は共有ドライブにする
- 取り寄せ・書き戻しのスクリプト: 一覧・取得・アップロードを用意し、
.claude/settings.jsonで実行を許可しておく - claude.ai/code の環境: セットアップスクリプトと、鍵を入れた環境変数を設定する
つまずきやすい3点
- サービスアカウントは保存容量を持たないので、マイドライブには書き込めません(403「Service Accounts do not have storage quota」)。共有ドライブを使います
- 鍵を使うスクリプトの実行を許可しておかないと、自動モードの安全確認で止まります
- 環境変数はその環境を使える全員から見えます。用途ごとに環境を分け、使わなくなった鍵は無効化します
頼み方のコツ
「媒体」と「素材の場所」を一言で伝えるのが基本です。構成を確かめたいときは、それも添えます。
| 頼み方 | Claude Code の動き |
|---|---|
| 「素材を使って動画を作って」 | どの回か・素材・媒体・構成を順に質問し、承認を待ってから書き出す |
| 「素材を使って Instagram 用の動画を作って。◯◯の素材で」 | 質問なしで完成まで進む。曲は仮のものを焼き込む |
| 「YouTube/FB 用の動画を作って。素材・テーマは◯◯で」 | 質問なしで、既存の回と重ならない切り口を自分で探す |
- 構成を先に見たいとき: 「書き出す前に構成とテロップを見せて」と添える。書き出しは1回3〜4分かかるので、直しは書き出す前が手軽です
- 媒体ごとの型は
CLAUDE.mdに: 尺・テロップの文字数・音の扱い・出し先を書いておくと、頼み方が短いままでも守られます - Web 版は新しいセッションで:
CLAUDE.mdを直しても、動いているセッションには反映されません - やり取りの言語を書いておく: Web 版では、書いておかないと途中報告が英語になることがあります
仕上げで人が確かめること
尺・音量・ファイルの大きさといった数字は、報告どおりに仕上がります。最後に人の目で見たいのは「見て判断すること」と「言い回し」です。これは CLI 版でも Web 版でも同じです。
- 写り込み: フレームを拡大して、電線・鉄塔・建物・道路・人を見る
- 体験談の書き方: 「一緒に見ました」のように、実際に無かった場面をテロップにしていないか
- 言い過ぎ: 出典の「この地」を「この森」と言い換えるような、小さな一歩も拾う
- 使用済みの素材: ファイル名で他のレシピと照合する。似た名前のフォルダに別の時期の素材があることも
- 曲: 最後に人が試聴して決める
Claude Code は、自分の言い回しが出典より踏み込んでいると自分から申告してくれることもあります。その申告も手がかりにしながら、公開前の最後の確認は人が行うと安心です。
まとめ
- Claude Code は、レシピを書いて ffmpeg で書き出す。CLI 版でも Web 版でも、一言の依頼から SNS 向けのショート動画を作れる
- 書き出しの品質は同じ。違いは素材と完成品の受け渡しと、一般のサイトを開けるかどうか
- 手元で仕上げまで行うなら CLI 版、PC を離れても作業を進めたいなら Web 版
- Web 版は、素材と完成品をストレージの API でつなぐ準備を最初にしておく
- どちらで作っても、写り込みとテロップの言い回しは人が確かめる
結論
動画づくりを頼むなら、作り方ごと CLAUDE.md に書いて渡す。
流れと決まりが書いてあれば、Claude Code は CLI 版でも Web 版でも同じように動いてくれます。違うのは、素材と完成品をどこでやり取りするかだけです。
まずは手元の CLI 版で、「素材を使って動画を作って」と頼んでみてください。流れが固まったら、同じリポジトリのまま Web 版にも広げられます。